秋元波留夫『99歳精神科医の挑戦』
カテゴリ:本
99歳精神科医の挑戦好奇心と正義感
秋元波留夫
岩波書店
この本は、高谷清『異質の光』(大月書店)、不破哲三『私の戦後六〇年』(新潮社)の今年のトップ3だ。
本を読んで、こんなに喜びを感じられるものに出会うのはそんなに多いものではない。
1904年(明治39年)生まれの秋元さんは、
あの
「我邦十何万ノ精神病者ハ実ニ此病ヲ受ケタルノ不幸ノ外ニ、
此邦ニ生レタルノ不幸ヲ重ヌルモノト云フベシ」で有名な呉秀三の教え
を直接受けた、わが国の精神医学の重鎮、
20世紀のまさに「生き証人」です。
本書は、リハビリテーション医学の大御所・上田敏さんが
「元気な、かがやく高齢者を世に紹介したい」のおもいで
構成したインタビューを基にしています。
だからすごく読みやすく、いっきに読めますが、
読後には、深い思想と実践に感動します。
1章「追想-風土と人生」には両親と兄弟への深い愛情が。
2章「自由の大地-松本高校から東大医学部へ」、
3章、精神科医療の方向をさだめた「人生模様-石田昇と蘆原将軍」、
4章「大自然の片隅-伊豆大島藤倉学園、そして北大へ」
は青春の悩みと精神科医療への志が響いてきます。
そして、
5章「勝利なき戦い-十五年戦争と精神障害者の受難」
6章「忘れじの面影-伊藤千代子の青春と治安維持法」
は圧巻です。
秋元先生は、最近の講演で、
「日本国憲法、とくに九条は、日本という国の基本的な掟、
よりどころであり、とくに体や心に障害をもった人の命と暮らしを
守るために、なくてはならない掟だと確信している」
と強調されます。
先生は80年以降、地域での小規模作業所の実践と利用者に
共感と感動をもって出会い、ともに運動をつくってきました。
その生き様ゆえに、この確信はあります。
「九条を守る運動を全国におしひろげ、
大きな世論を巻き起こし、
自民党政権の改憲の暴挙を粉砕しなければならない」。
きわめて激しい政治的メッセージですが、
しかしそれは1世紀を好奇心と正義感をもって生きてきた
秋元先生ならではの確信なのです。
わたしも平和を築くリレーランナーの一人になりたいな。
秋元先生のよびかける
障害者・患者9条の会はここへ
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