2011-03-01

お互いさま

父を看取った。78歳。

2006年に脳梗塞で倒れ、片マヒに。
「字が書きたい」願いは懸命のリハビリで叶うも、
昨年春頃から衰えがすすみ、
お盆すぎには一人で立ち上がれなくなった。
秋からは、唯一空きのあった介護型療養病院で過ごしていた。

障害者権利条約のドンマッケイ議長は、
「平均寿命70歳を越える国の人々は、平均8年間、
人生の11.5%は障害をもちながら過ごす」と講演した。
日本の場合、そのうちの要介護期間は男1.5年、女3年と聞く。

それは長いのか短いのか。

いずれにしても、誰もが生まれてから死ぬまで、
誰かに支えられ、誰かを支える。
けっして一人ではない「お互いさま」の関係がある。

ところが、介護型病床は13万床からゼロが決定されている。
反対運動で6年延長となったものの、
「高齢者集中型から全世代対応型へ」は社会保障改革の大路線だ。

現在の検討本部室長は、自立支援法審議で
「福祉は買うもの」「それが新しい福祉の考え方」と国会答弁
した中村秀一社会・援護局長(当時)。
高齢者と障害者の問題はここでもつながっている。

障害は「自己責任」。
「トイレに行く、外出するなど日常行為を支援すること」は「益」。
だから「利用料」を払って当然。
扶養は家族に義務がある・・・。

この考えのもとに制定された障害者自立支援法は、
猛烈な反対運動と世論によって否定され、
違憲訴訟団は「基本合意」を政府と交わした。

これは障害者だけでなく高齢者や子育てにもつながる
「福祉の思想」の転換だった。
社会的な困難は、個人や家族の責任ではなく、社会全体で支える。
それは「お互いさま」だからだ。

「人間としての尊厳を深く傷つけたことに対し」
「障害者及びその家族に心から反省の意を表明する」と合意文書。

制度改革推進会議は、この基本合意と権利条約をうけてスタートした。
そして、その第一歩の障害者基本法抜本改正案が大詰めをむかえている。

逆風のなか、
生きることの絶対的価値、
人間の尊厳を守り抜く過去から未来につながる長い道のりを、
私たちは歩んでいる。

PS 写真は、昭和31年頃のオヤジ、お袋、そしてわたし

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