「仕事は忙しい人間にやってくる」のだそうだ(^^;)
とはいえ、読書でこころに残ったことを記録しておくのもだいじかな、と
■重松清『十字架』 講談社 2009年12月14日
> 毎日新聞1月18日「本の現場」欄に重松清登場。
> 新作『十字架』はストックホルム郊外のかの「森の墓地」を
> モチーフにしているとのこと。
> いじめを苦にして自殺する中学校2年生俊介が想像する旅の最後の地が
> そこだったというわけ。
と北海道の友人が知らせてくれた。
わたしは群馬県人の端くれで、きわめて「へそ曲がり」。
新しものは大好きなくせに、人が先んじると見向きもしない・・・こまったもんだ。
だから「重松清」も見向きもしなかった(^^;)
でも、「森の墓地」が書かれているのならば読まねばならぬ、と読み始めたら・・・
10数ページで重松ワールドの虜になった。
重い話だ。生きることはつらい。
重たい荷物を背負っているんじゃなくて、重たい荷物と一つになって歩いているんだ。
しかし重松ワールドのリアルな空気感はたいしたもので、
わたしは主人公といっしょに悲しみ、怯え、泣いて、初恋にドキドキした。
そして、
: かすかな風が吹く。空が語りかけた。言葉はない。ただ涼やかな風が、
: あのひとの背中をいたわるように撫でていく
に、次の光景がよみがえった。
> 「風にゆれて葉っぱが鳴ってる」
> アスプルンドの設計で世界遺産でもあるストックホルムの市営「森の墓地」で
> カミさんが言った。
> ヤマナラシ(山鳴し:ポプラの一種)の樹だ。
> 「森の礼拝堂」に向かう道に並んで、鳴っている。
> 空は濃い蒼色。北欧にはめずらしい快晴だ。
森の墓地、人生のリレーを感じた場所。
■花田春兆(俳人)『鬼が笑う 月が泣く ー「うたの森」に谺する詩・短歌・俳句』
角川学芸出版 2010年1月21日
”天の邪鬼”というのはこの人のことだ。
「鬼哭」といわれるように古来中国の鬼は哭くのだ。だけど、このJIさまは
「一転、変身して笑ってしまう」「ケチな笑いではない」「もっと明るく爛漫な笑いだ」という。
この本に収められたすべての作品に出会ってほしい。
なによりもそれぞれから感じるのは、いのちの圧倒的な迫力だ。
そして、このJI鬼の「解説」が見事なスパイスとなっている。
「粉雪」は、満州に生まれた脳性マヒ者の作品で、
「ねえ、母さん、あの雪をとってきて・・・」とせがんだおもいを綴る。
ほとんど寝たきり状態で 外出するようになったのは「ひまわり号」運動がキッカケという。
その作品に子規の「いくたびも雪の深さを尋ねけり」をひきながら、
外に出て触ることのできない病気や障害をもつ者、特に子どもが抱く雪への
たとえようもなく強い好奇心や憧れと重ねる。
全障研愛知支部の重鎮だった新堂廣志さんの句
歌詠みは病人が多いよと言う君にわれもうべなう常臥なれば
■社会福祉法人大木会編
『ロビンフッドたちの青春 ーある知的障がい者施設・30周年の演劇実践記録』
中川書店 2009年10月24日
滋賀の石部にあるあざみ寮・もみじ寮の寮生劇は、ぜひ見てみたいと念じていたが、
30年の記録として友人の石原繁野(前あざみ寮施設長)さんから送っていただいた。
結婚を祝うつどいに参加してくれた友人への贈り物として「あざみ織り」を届けてもらってから、
石原さんとはそれ以来のおつきあいだ。20年以上になる。
寮は、ほぼ5年ごとに大規模な演劇にとりくんできた。
実践記録は402ページにおよぶ膨大なものだが、長さは感じない。
とりわけ、脚本家・演出家の秋浜悟史さんと
発達心理学者の田中昌人さん(全障研初代委員長)の上演会ごとの長い挨拶文と
座談会「ロビンフッドの冒険の冒険」を振り返っては、
じつにおもしろく、さまざまな示唆があふれている。
田中昌人曰く
「人間は発達していく上で自分を変えていく力を生み出していくわけです。
これまで乗り越えることのできなかったことを成し遂げ、
新鮮な気持ちの流れをつくっていく、そのことを通じて、改めて自分をとらえ直し、
内面を豊かにしていくバイパスをつくる。
このバイパスをもつことによって、手をつないで育ちあう自制心が育つ」
つい感動のあまり吹聴したものだから、わが事務所のスタッフ全員が
この本を「共同購入」してしまった(^_-)
演劇をするに際してロビンフッドがいい!と言ったのは糸賀一雄夫人の房さんだそうだ。
民衆の味方であるロビンフッドはイギリスに伝わる国民伝説物語。
ラストシーン
森の仲間たちは、ロビンを助けるために、そして城に火を放つために、
わざとつかまってどんどんお城に入っていきます。
やがて、戦火もおさまり敵も味方も一人ひとりがこう思います。
「みんながロビンフッドになればいいのだ」
「みんながロビンフッドになりさえすれば世の中は変わってゆくのだ」
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