2008-05-10

わたしのふるさと -沼は消えた-

わたしの故郷は、利根川と渡良瀬川に挟まれた、
小さな湖沼の多いところだ。

からっ風のふくなか、川や沼に漁にでて、
ふなを捕り、なまずをとって貴重なタンパク源にした。
その名残りが田山花袋の小説『田舎教師』に
川向こうの板倉沼でとれた雑魚を漁師が売り歩いてくる
という場面がある。
足尾の鉱毒で有名な田中正造の旧谷中村(現在・渡良瀬川遊水池)はその東北部に接している。

友人がC型肝炎でふせっていると聞いて、5年ぶりぐらいに彼の家を訪ねた。
彼の家は、小さな沼のほとりの一軒家だった。

高校の頃、彼の家によく仲間があつまり、
隣の家を気にすることなく、わいわい語り合ったものだ。
夏は沼をわたってくる風がここちよかった。
その沼が消えていた。

彼のいうことには、その沼の地権者がある日その沼を売った。
するとある日からどこから来たのかわからないダンプカーがあふれ、
産業廃棄物らしものを捨て、沼を埋め始めた。
彼の家の隣の沼はあっというまもなく埋め立てられ、
北側の隅のみがまだ沼であったことを示していた。

沼を渡ってきた風は二度と吹かず、カエルのなく声も、
釣り糸をたれればとれた魚も、いまはいない。
それだけでなく、どこから運び込まれたかもわからず、
どんな内容かも知らされない産業廃棄物が、
ある日から、家の隣に埋められ、
それは時とともに地中にしみこみはじめる。

彼の娘は春に3キロ北の小学校に入学する。
入学者は20人で一学級だという。
通学路には、2年後の開校めざして
某私立大学の大工事が本格的にはじまり、
数十台のダンプが走り回る。

そのわきを、頭に小さなヘルメット、
学校指定のおきまりの揃いのジャージを来て、
赤いランドセルが歩いていく。
(1994年1月4日)

2 件のコメント:

ユリカモメ さんのコメント...

あっ、あっ 聞こえますか?
じぁなくて…コメントが投稿できるか?!
でしたね、すんません

*今度のブログは広告もなくて
 金ベエさんの素敵な画像が全面に
 UPされているしええ感じです。

*ただ、投稿するのに
 グーグルへの登録をしておかないと
 いけないんですね、これで変な
 書込みが防げますね、ただね、
 文字の確認が判りやすいのと判りにくい
 のがあるのが難点かなぁって…

*昨日からの会議、お疲れさまです
 また全国に素敵な情報やアイデアを
 発信してね、お疲れさまです。

*あっしは昨日から歯痛でシクシク.. 
 寒いのもあるし、今日はノンビリと
 自宅でかしこうしていますです。

ほな、これからも よろしゅうに。

金ベエ さんのコメント...

さっそくありがとね(^_^)

歯の痛いのはなんともつらいものです。

疲れがたまると痛くもなるよ

明日は(今日は少しわたしはこころの洗濯日)