2009-02-01

浜矩子『グローバル恐慌 -金融暴走時代の果てに』



浜矩子(はま のりこ)
『グローバル恐慌 -金融暴走時代の果てに』岩波新書 2009年1月20日
*すこぶるおもしろい。著者は一橋出、三菱総研経て同志社大教授。概要をわたしなりにメモ(^_^)

●2008年9月 グローバル恐慌に向けて地獄の扉が開いた時
・次はいったい何が起きるのか。今、誰もがこの不安に駆られている。重苦しい日々

●サブプライム・ローン証券化問題
・アメリカの信用力の低い個人向け住宅融資(=サブプライム・ローン)
・サブプライム=返済能力からみれば最優遇金利の適用資格がない人にも「少し高めの金利でよければお貸しできますよ」→じつは「(それにすぐに物件価格は値上がりしますから)高めの金利も支払わなくてもよくなりますよ・・・」→どこかで行き詰まる→でも、本質はそこにない。
・この融資に内在するリスクが証券化という手法によって世界中にばらまかれた!*本質

●証券化を活用する金融機関は、ツケで飲む客が多い飲み屋のようなもの
・なじみ客が増えるのは結構だが、ツケはあくまでもツケ。請求書を現金代わりにして仕入れの代金を払うわけにはいかない
・そこで→たまった請求書を切り分けたり束ねたりして、たくさんの福袋をつくる
・福袋を町中に売りまくれば、福袋代という現金収入が入る(請求書の山→現金化け)
・同時に貸し倒れリスクも福袋の買い手に転化

●魔術の落とし穴
・福袋を買った人たちがある日、焦げつきで大損→購入資金を用立てた人も(不幸の連鎖)→飲み屋も倒産
・しかしその飲み屋だけでなく町中の飲み屋がすべてそうだったら・・・
・危険な福袋に一切手を出さない人も、取引先がこの問題で倒産!で突如、資金繰り難に陥るかも→町中は疑心暗鬼の渦化→だれにもカネを貸さない、取引しない→町の経済は完全マヒ

●グローバル・バブルの背景
・2000年代以来、世界中が低金利・カネ余り
・日本国内で金利を稼げない(ゼロ金利)ジャパンマネーが世界中に出稼ぎに
・(「福袋」の)中身が怪しげであることを解っていても、儲けのためにはやむを得ない

●地球大の集中治療室
・様々な生命維持装置に息を吹き込まれながら、いま世界の金融システムがかろうじて稼働している
●「グローバル版・失われた10年」に第一歩を踏み込んだ
●ひきこもる地球経済
・カネの世界のみならず、モノの世界までが地球規模で集中治療室に

●カネがモノに再び引き寄せられる可能性はあるか
・新展開が起こりそうな分野として、さしあたり思い浮かぶのが医療・介護・教育・環境・貧困救済といった分野。人間が人間らしく生きるための基盤形成にかかわる分野
・経済効果も大きな新たな方向性が出てくれば、そこにモノとカネの新しい結合の余地も生まれるかも
・いまこそ、優しさと勇気を持って、弱さと手前勝手を克服すべき時